さて、懲りずに今回もおしっこの話です。
キモチいいのに、ニオイ立つ。あるときはビールっぽいニオイ、ある朝はニンニクっぽいニオイ、そして頑張った仕事のあとは栄養ドリンクっぽいニオイ。尿の臭いが、食生活を見事に再現してくれています。もちろん、気温や湿度がニオイの強度を左右したりしますが、そればかりではないようです。
最近、食生活に関係なく、おしっこのニオイが変わってきたような……。そんな方もいらっしゃるはず。実は、おしっこの「加齢臭」が今回のテーマです。ニオイの変化も、加齢によるサビつき現象のひとつです。
その理由は、尿路において菌が繁殖しやすい環境が、加齢とともに増すことにあります。まず単純に、菌の均衡を保つ体内の働きが崩れはじめること。この免疫力の低下や尿道粘膜の萎縮による防御力の減弱に加え、加齢に伴い、残尿・頻尿や失禁など排尿障害の症状がそのリスクを高めているとも言えます。たとえば、失禁をきっかけに菌は尿路を上行し、膀胱炎や尿道炎などの尿路感染症を起こすリスクも高まります。
一般に、ニオイを防ぐためには清潔であることが一番。身体や衣類の清潔は誰もが心がけているものの、尿を清潔に保つのはなかなか困難な業。そこで登場するのが、クランベリーです。
クランベリーに含まれるポリフェノール成分「プロアントシアニジン」が尿路へのバクテリア、ウイルス、その他の細菌の付着・定着を阻害します。そして、もうひとつ注目されるのが酸っぱさの成分の働きです。酸味成分としては梅干のクエン酸が有名ですが、クランベリーの酸っぱさの秘密は、その含有成分キナ酸にあります。キナ酸は体内で代謝されると馬尿酸へと変わります。実は、この「馬尿酸」が尿のpHを整え細菌類の繁殖を抑制し、臭いを改善しています*1。
ふだんの勢いあまる食生活と、最近つと感じるようになったサビつき現象を改め、アンチエイジングを望む人にはクランベリージュースを飲み続けること(適量飲む+毎日続けること)をおすすめします。このクランベリージュース単独の適量については、一日あたり200mlから300mlで十分であるといわれています*2。一日1500mlから2000mlと言われる水分補給の一つの選択肢に、クランベリージュースを加えてみたらいかがでしょうか。
シリーズ第4回は、「加齢臭」から考える、クランベリーの酸味成分に秘められたチカラ、尿の臭いの改善作用についてお話しました。
■注意事項
〇尿路感染を発症されている方は、医師の指示に従い、適切な治療を受けてください。
〇クランベリーを含む他の健康食品の一部は、抗凝固剤ワーファリンの効果を減弱させる可能性が報告されています。ワーファリンを服用している方は、クランベリージュース飲用について医師にご相談ください。
■参考文献
*1 Jackson B. et al., Effect of cranberry juice on urinary pH in older adults. Home Healthcare Nurse. 1997; 15(3): 198-202
*2 Kontiokari T. et al., Randomized trial of cranberry-lingonberry juice and Lactobacillus GG drink for the prevention of urinary tract infections in women. BMJ, 2001; 322(7302): 1571-1573
■関連図表
● 尿路感染症の再発に対する影響
クランベリージュースは50ml/日×6カ月、乳酸菌飲料は100ml/週5日×12カ月飲用。
グラフの曲線が下のほうにあるほど尿路感染が少ない。
[出典 BMJ, 2001; 322(7302): 1571-1573]